プロテオグリカンの明確な定義はありませんが、「生化学辞典」(東京化学同人発行)によると、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)とタンパク質との共有結合化合物の総称、古くは、ムコ多糖タンパク質とも呼ばれた、と説明されています。
一般的には、1本のコアタンパク質に数本から数10本のグリコサミノグリカン(糖鎖)が結合している複合糖質を総称してプロテオグリカンと呼んでいます。
グリコサミノグリカンが特異的な2糖繰り返し構造を持ち糖鎖を構成していますが、コアタンパク質に比較して糖の含量が多いため、細胞表面に存在する一般の糖タンパク質とは区別されています。
グリコサミノグリカン(ムコ多糖、GAGと表記されることもあります。)を構成する2糖の組合せの種類により、いくつかの異なったタイプの糖鎖が存在します。その糖鎖の種類に従ってプロテオグリカンも分類されています。
BMJが生産しているプロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンと言う種類のものです。
このコンドロイチン硫酸プロテオグリカンも、さらにいくつかの種類があり、BMJが生産しているものは、大きな分子量をもっていることが特徴の「アグリカン」というプロテオグリカンです。
糖鎖は、DNA・タンパク質に次ぐ第3の生命鎖ともよばれています。生物の体内には、鎖状に繋がった成分としては下記の3つのものがあります。
1
DNA
(RNAを含む)
2
タンパク質
(コラーゲンを含む)
3
糖鎖
(糖蛋白質・糖脂質・プロテオグリカン等複合糖鎖を含む)
BMJはこの3成分のうち、非変性Ⅱ型コラーゲンとプロテオグリカンの2種類を生産しています。
BMJは高分子成分専門のメーカーです。
成分の区分 | 吸収場所 | 成分の行き先 | 主たる機能 |
---|---|---|---|
低分子成分 | 小腸の絨毛 | 全身の細胞 | 細胞の栄養素・ エネルギーの原料 |
高分子成分 | 小腸のM細胞 | パイエル板 | 免疫細胞の抗原 |
BMJのプロテオグリカン・非変性Ⅱ型コラーゲンとも、免疫抗原としての必要条件をクリアした成分です。
この腸管免疫システムの中心になっているのは、小腸の所々に存在するパイエル板です。
小腸で消化され低分子化した一般的な栄養素は、絨毛から吸収されるのに対し、アレルゲンとなるタンパク質や病原性微生物等の抗原は、パイエル板に接している小腸のM細胞から取り込まれることが知られております。取り込まれた抗原は、マクロファージや樹状細胞に貪食され、T細胞に抗原の断片が提示されます。T細胞は抗原の種類に応じて免疫細胞の活性、抗体産生、経口免疫寛容の誘導等を行います。
近年、感染症、アレルギー、炎症性腸疾患、自己免疫疾患などの予防及び治療に腸管粘膜免疫システムが重要な役割を果たしていることが認識され、注目されています。
糖鎖は、ヒアルロン酸を除き、糖鎖単独では存在しません。よく知られているコンドロイチン硫酸は、体内では単独では存在していません。抽出時にコアタンパク質を分解酵素で除去したものです。糖鎖は、生体内では必ずコアタンパク質と結合して、プロテオグリカン、糖タンパク質または糖脂質の形で存在し、機能しています。
ヒアルロン酸は、硫酸基の結合もなく、コアタンパク質との結合もないため、プロテオグリカンを構成しません。
また、グリコサミノグリカンを構成する2糖とは、アミノ糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミンです。)とウロン酸(グルクロン酸、イズロン酸またはガラクトース)でありますが、この2糖が交互に繰り返す構造を有していることが特徴です。この2糖の組み合わせの違いにより、数種類のグリコサミノグリカンが存在します。
さらに、この2糖には硫酸基が結合しているものもあり、その結合場所や結合の割合も様々です。
従って、プロテオグリカンもいくつかの種類があります。
グリコサミノグリカン | 主な存在部位 | アミノ糖+ウロン酸 |
---|---|---|
ヒアルロン酸 | 硝子体、関節液、臍帯 | GlcNAc+GlcUA |
コンドロイチン | 角膜 | GalNAc+ GlcUA |
コンドロイチン硫酸 | 軟骨、骨、象牙質 | GalNAc+ GlcUA |
デルマタン硫酸 | 皮膚、腱、動脈壁、骨、象牙質 | GalNAc+ IdoUA/ GlcUA |
ケラタン硫酸 | 軟骨、椎間板、角膜 | GlcNAc+Gal |
ヘパリン | 筋肉、小腸、肺、腱、肝臓、脾臓 | GlcNAc+ IdoUA/ GlcUA |
ヘパラン硫酸 | 細胞表面、基底膜 | GlcNAc+ IdoUA/ GlcUA |
グリコサミノグリカンを構成する単糖の種類は、次の8種類が知られています。
グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、フコース、N-アセチルグルコサミン、
N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルノイラミン酸
上記の8種類の単糖のうち特定の2糖が繰り返すことによって、グリコサミノグリカンの種類が決定されます。
左図は、軟骨組織の模式図です。軟骨は軟骨膜と軟骨細胞と細胞外基質でできていることを示しています。
細胞外基質は細胞外マトリックスとも言います。軟骨細胞は、自分が生きるための環境、すなわち細胞外基質を作るため、ヒアルロン酸とプロテオグリカンとⅡ型コラーゲンを一生懸命作り続け、細胞の外に吐き出しています。吐き出されたヒアルロン酸やプロテオグリカンやⅡ型コラーゲンは、一定の期間仕事をすると、役目を終え分解されます。軟骨細胞はまたこれらの分解酵素を作る仕事もしています。生産と分解をバランスよく行っています。
右図は、細胞外基質を拡大したものであり、ヒアルロン酸とプロテオグリカンとⅡ型コラーゲンで構成されており、水分が90%も占めている状態を表しています。
関節液は液体ですが、軟骨の細胞外基質はゲル状になっています。細胞外基質は、軟骨自体にクッション性を与えるために、大量の水分を保持しておくことが最大の機能ですが、さらに、滑膜から関節液に吐き出された酸素や栄養分を吸収し、さらに軟骨細胞に供給するための貯蔵庫の役目もしています。また、逆に細胞外基質は軟骨細胞から吐き出された炭酸ガスや老廃物の一時保管場所にもなっています。
膝関節の軟骨は、軟骨に荷重つまり体重がかかったとき、軟骨中の水分が関節腔に押し出され関節液と混じり合います。混じり合った関節液は容量が増えるので、滑膜が吸収し、静脈毛細管を通って肝臓、腎臓、肺に戻します。逆に軟骨の荷重が解放されると関節液を吸収し軟骨は膨張します。この関節液には酸素や栄養分が含まれています。関節腔では軟骨に水分が吸収された分減圧になりますので、滑膜から関節腔に自動的に関節液が供給されます。関節軟骨はちょうどポンプの役割をしているのです。関節腔は貯蔵タンクです。
軟骨は3種類ありますが、関節軟骨は硝子様軟骨という種類で、半月板は繊維性軟骨という種類で硬さが違います。もうひとつ耳の軟骨で弾性軟骨と呼ばれています。一番柔らかい軟骨です。
細胞外マトリックスの機能、すなわちプロテオグリカンとコラーゲンの機能とも言えますが、まず細胞の足場になっていることです。
しかし、もっと重要なことは、毛細血管から吐き出された酸素や栄養素、さらには信号伝達物質であるサイトカインやホルモン、NK細胞等の免疫細胞、場合によっては細菌やウィルス等の病原菌や毒素等も一時的に結合保持して、各細胞に配給したり結合したりする機能です。また逆に細胞から吐き出された炭酸ガスや老廃物、細胞が産生した有用成分等を一時的に結合保持し、近隣の細胞に渡したり、毛細血管に戻す機能を担っています。
このような活動を通じてプロテオグリカンとコラーゲンは間接的に細胞の分化、増殖、結合、移動等に関わっているものと考えられています。
プロテオグリカンとコラーゲンは、細胞外マトリックスとして上記のような機能を有していますが、さらに単体として各々の機能を有していることが知られています。